ストロンチウム90(Sr-90)とは?


 カルシウムに化学的性質がよく似たストロンチウムは、食品や空気から体内に取り込まれると、骨や歯に蓄積されます。赤ちゃんの歯は、お母さんのお腹で命が芽生えて5~6週間経った頃からできはじめ、生まれて6~8か月経つと生えてきます。福島原発事故で大気中に放出された放射性物質の一つであるストロンチウム-90(Sr-90)は、骨だけでなく乳歯にも蓄積されます。
 乳歯(上下20本)は、6歳前後からおとなの歯である永久歯に生え変わります。Sr-90の放射能の半減期は約29年なので、抜けた乳歯のSr-90は長い間ほとんど放射能が弱くなることはありません。乳歯を保存しておけば、歯に含まれるSr-90をいつでも測定することができるのです。被ばくしていたら、その程度を知ることができます。


1950年代から60年代にかけて、とくに南太平洋で核実験が行われていたことを知っていますか。当時、その海域に出漁していた日本の漁船が被爆して乗組員に死者まで出ています。核実験で放出されたSr-90は、気流に乗って日本にも飛んできました。Sr-90は白血病や免疫不全、がん以外の病気の原因ともなるので、全国各地で調査が行われました。
 その結果、放射性降下物量に比例して乳歯中のSr-90の蓄積量が高くなっていることが明らかにされました。また乳児の栄養の違いによって、乳歯中のストロンチウム90の蓄積量に差があることも分かりました。
それが以下のグラフです。


出典:
「第22回日本臨床環境医学会学術集会特集」(Vol.22 No.2 2013)
福島第一原発事故により放出された放射性核種(ストロンチウム、プルトニウム)のヒト乳歯への蓄積に関する研究
井上一彦1)山口 一郎2)
1)鶴見大学歯学部探索歯学講座
2)国立保健医療科学院 生活環境研究部

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 ここに見られるように、放射性降下物量に比例して乳歯中のSr-90の蓄積量が高くなっています。また乳児の栄養の違いによって、乳歯中のSr-90の蓄積量に差があることがわかりました。


 2011年3.月11日の東京電力福島第一原子力発電所事故は、大量の人工放射性物質を放出し、地球規模で自然環境を汚染しました。破損され穴とひびの入った格納容器に流れ込む大量の地下水は、溶け落ちてたまっている核燃料と接触して高濃度に汚染され、今なお海に流出し続けています。
 事故後、研究者たち、動物の乳歯や骨などに蓄積する人工放射性物質について調べました。今までに行われたウシ、ブタ、野生ネズミ、サルについての研究から、とくに若い動物の歯にストロンチウム90が顕著に蓄積していることが明らかにされています。その値は高濃度汚染地ほど高くなっています。
しかし、人に対するSr-90の被曝量の調査はほとんど行われていません。動物と同じようなことが人にも起こっている可能性があり、私たちは心配しています。

 子どもたちの将来を見守ってゆくために、私たちは皆さんに、まず乳歯を保存することを提案します。
 日本には乳歯一本一本のSr-90を測る機関がまだありません。時間はかかりますが、測定所の建設も計画中です。これからはますます市民が力を合わせて、子どもたちを見守ってゆく必要があります。ひとまず「記録カード」と一緒に、乳歯を保存しておきましょう

抜けた乳歯を捨てないで、記録カードといっしょに保存しておきましょう

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